今日は、いつものように、マーケティングの世界的権威であるジェイ・エイブラハムが著した『ハイパワー・マーケティング』(角川書店)のなかの文章を添削してみたいと思います。
この本は、その内容に関しては「天下一品」なのですが、文章に「つたない箇所」が多々あるのです。
ということで、コピーライター兼校正者の私からしてみれば、添削できる絶好の材料でもあるわけですね。
今回の記事では、読点を打たないと、読みづらくなるだけではなく、読み手に誤解を与えてしまう、という話をしたいと思います。
そのほか、「主語の混在」という問題点も取り上げたいと思います。
本来はテーマを分けるべきですが、「添削」という性質上、いろいろな問題点が一緒に見つかってしまうことがあるのです。
それでは、さっそく解説していきましょう。
追加購入してもらうための「3つのテクニック」
ここからは、いきなり文章の添削に入るのではなく、まずは、その章で語られている「内容」からお伝えしていきたいと思います。
そのような順番で解説したほうが、あなたに、添削の内容がより伝わると判断したからです。
・・・
ジェイ・エイブラハムによれば、クライアントが得られる最終的な利益を増やすためには、3つの方法があるといいます。
つまり、クライアントに何かを購入してもらう際、お得な価格で「追加購入」いいかえれば「ついで買い」をしてもらうということです。
そのような追加購入をしてもらうことで、クライアントの「満足度」はさらに上がり、販売者も売り上げがあがるのです。
さてジェイ・エイブラハムは、追加購入の方法には以下の3つがあるとしています。
- 商品やサービスを追加する
- 購入できる量やサービスを受けられる時間の選択肢を増やす
- 組み合わせを増やす
(2つ目の文章こそ、今回の「添削対象」である「読点が抜けた文章」なわけですが、これに関しては、のちほど解説します)
簡単に説明すると、1つ目は、車を買ったときに、サンルーフなどのオプションを付けるようなケースです。
2つ目については、お客さんが何かの商品を1つ購入しようとしたとき、たとえば2つ分の価格で3つの商品が購入できるようにするといったケースです。
お客さんは、その提案を「お得」に感じますので、より多くのお金を支払ってくれる可能性が高くなります。
それは、何かのコンサルティングなどの「サポート期間」にも同じことがいえます。
3つ目は「組み合わせを増やす」というものです。
マクドナルドなどでは、はじめから商品が組み合わされて「セット販売」されています。
このようにすることで、お客さんは、よりお得に購入でき、売り手側も、より多くの利益が得られるわけですね。
さて、問題は、上記3つのうち2つ目です。
それをこれから見ていきましょう。
しっかり読点を打たないと意味が通じない
さて、先ほどご紹介した2つ目の文章と、そのあとに続く補足の文章を引用してみたいと思います。
(なお、読みやすくするために、1行ずつ改行しました)
まずは、タイトル部分から見ていきましょう。
今の状態では、「購入できる量やサービス」を受けられる・・・このように読んでしまう人も出てきます。
しかし、実際は、以下のように伝えたかったはずです。
「購入できる量や、サービスを受けられる時間の選択肢を増やす」
・・・
さらにいえば、以下のように「選択肢」の部分をカギカッコで囲うと、より読みやすくなります。
「購入できる量や、サービスを受けられる時間の『選択肢』を増やす」
・・・
そのほか、この場合、「時間」ではなく「期間」が適切な表現といえます。
補足の文章のなかでも「期間」という言葉が使われていますよね?
それを修正すると、以下のようになります。
「購入できる量や、サービスを受けられる期間の『選択肢』を増やす」
・・・
さらに、もっと突き詰めれば、文中で「を」が2回使われていますので、以下のように最初の「を」を「が」に替えるとよいかと思います。
「購入できる量や、サービスが受けられる期間の『選択肢』を増やす」
では、つぎは補足説明の箇所を見ていきたいと思います。
主語が混在していると、わかりづらい
もう一度、先ほどの全文を掲げてみます。
1行目は、とくに問題はありません。
2行目に関しては、主語を入れると「わかりやすい文章」になります。
以下は改善例です。
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また、クライアントが自動的にサービスを受け続けたい期間はどれほどでしょうか。
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ただ問題は、3行目の文章です。
この文章には、2つの主語が混在してしまっています。
「提供しない」のは販売者であり、「選べない」のはクライアントです。また、最後の「しない」の主語は販売者です。
このように、2つの主語が入り混じっているため、非常にわかりにくい文章になってしまっているのです。
さらにいえば、読点が打たれていないため、「クライアントに必要な」と読むのか、それとも「必要な質や量」と読むのか、判断できない文章になっています。
以下が改善例になります。
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クライアントが、必要としている質や量の選択ができなかったり、望んでいるよりも短い期間しか選べなかったりしないでください。
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ただ、「否定の表現」になっていますので、文章全体に「違和感」があります。
そこで「肯定口調」にしてみました。
ちなみに「肯定口調」にした場合は、「クライアントが」のあとの読点は省いてもかまいません。
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クライアントが必要としている質や量、もしくは、望んでいる期間を自由に選べるようにしてください。
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最初の文章とくらべて、すっきりと主旨が伝わる文章になったのではないでしょうか?
もしくは、以下のように書いてもよいでしょう。
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クライアント自身に、彼らが必要としている質や量、もしくは、望んでいる期間を自由に選んでもらうようにしてください。
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こちらのほうがいいかもしれませんね。
さらにいえば・・・
なお、細かいことをいえば、2行目の文章で、「量と質」という順番で伝えているのですから、3行目の文章でも、この順番で伝えたほうが文章が整って見えます。
そこから考えると、タイトルには「質」という言葉を入れたほうがいいですね。
以下が改善例になります。
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「購入できる量や質、サービスが受けられる期間の『選択肢』を増やす」
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ただ、このようにしてしまうと、今度は、「購入できる量や質」という部分が、「が受けられる」にかかるようにも見えてしまいます。
それを防ぐには、以下のようにしたらいいかもしれませんね。
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「購入できる量や質の選択肢、サービスが受けられる期間の選択肢を増やす」
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最後に、ここまでの改善例をまとめてみたいと思います。
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「購入できる量や質の選択肢、サービスが受けられる期間の選択肢を増やす」
クライアントが、適切な量や質の商品・サービスを購入できるように助けましょう。
また、クライアントが自動的にサービスを受け続けたい期間はどれほどでしょうか。
クライアント自身に、彼らが必要としている量や質、もしくは、望んでいる期間を自由に選んでもらうようにしてください。
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以上、参考になれば幸いです。