今回は、文中にある一部のフレーズを入れ替え、読点を適切な位置に打つことで、その文章はうんとわかりやすくなる、という話をしたいと思います。

日本語の場合、文中のフレーズを、好きな位置に配置することができます。

その「日本語の自由度」は、その人独自の「文体」を形作るわけですが、この「自由度」がかえってあだになる場合が多いのです。

それでは、さっそく見ていきましょう。

「ブレイクスルー」に関するくだり

今回も、ジェイ・エイブラハムの著作の翻訳本である『ハイパワー・マーケティング』(角川書店)を題材にしたいと思います。

ジェイ・エイブラハムは、マーケティングにおける世界的な権威です。

この本は全部で17章あるのですが、そのなかの「第16章 マインドセット」に、問題の箇所はあります。

この章では、ビジネスにおいて「ブレイクスルー」を起こすことがどれほど大事かということが、具体的な例とともに語られています。

ビジネスの慣習に従わず、斬新な視点をもてば、他のライバルを凌駕して一気に飛躍していける、というわけです。

フレーズの位置を変えれば、文章はわかりやすくなる

問題の箇所は、『ハイパワー・マーケティング』のなかの285ページにあります。

以下、引用文です。

なお、読みやすくするために、改行と空白行を取り入れました。

どこがいけないのでしょうか?

問題の箇所は2行目にあります。また、4行目にも工夫が必要です。

まず2行目ですが、フレーズの位置が不適切であり、なおかつ、読点が打たれていないために、わかりづらい文章になってしまっています。

以下、2行目の改善文です。

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大きなブレイクスルーに必要なのは、一般的な常識とともに開かれた心で「超論理的」に物事を見ることです。
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「大きなブレイクスルー」は、イコール「一般的な常識」ではありません。

そこで、「大きなブレイクスルーに必要なものは」と「一般的な常識(とともに)」というように対応させました。

また、「『超論理的』に開かれた心」という表現は、不適切です。何を言っているのかもイメージできません。

「開かれた心」というフレーズには、「超論理的」という修飾は不要なのではないでしょうか?

正しくは、「『超論理的』に物事を見る」というつながりになるはずです。

・・・

もう一度、くらべてみてください。

以下は改善前の文章です。

そして以下が、改善後の文章です。

いかがでしょうか?

かなり改善の余地があったわけです。

4行目について

たったいま説明したように、「大きなブレイクスルーに必要なのは」という主語にしたのなら、4行目も変えなければなりません。

以下は、4行目の文章です。

文章の内容から考えて、「ブレイクスルーは」という主語になるので、その主語をしっかりと明示する必要があります。

以下、改善文です。
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ブレイクスルーは、高学歴、高いIQ、あるいは大金とはほとんど関係のないことです。
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いかがでしょうか?

それでは、すべての文章をもう一度、示したいと思います。

まずは元の文章です。

つぎは、改善後の文章です。

・・・

以上、文中にある一部のフレーズを入れ替え、読点を適切な位置に打つことで、その文章はうんとわかりやすくなる、という話をしてきました。

参考になれば幸いです。