今回は、一文が長くなる場合は、その中にふくまれる「主語」をそれぞれ明示する、という話をしたいと思います。
本来は、ひとつの文章のなかに主語は一つというのが原則ですが、長い一文になると、その中に複数の文章が含まれることがあるため、それぞれの主語を示さないとわかりにくい文章になってしまうのです。
今回も、いつものように『ハイパワー・マーケティング』(角川書店)を題材に、文章を添削していきたいと思います。
長い文章では、しっかりと主語を示す
今回とりあげる『ハイパワー・マーケティング』というのは、ジェイ・エイブラハムの著作を日本語に翻訳したものです。
問題の箇所は、「第16章 マインドセット」にあります。
この章の内容を先にいうと、ビジネスにおいては慣習にとらわれずに、広い視野で、そして斬新な視点で物事を捉えていけば、それが「ブレイクスルー」をもたらし、その結果、その人は、多くのライバルに抜きん出ることができるという話になっています。
以下は、問題の箇所の引用文です。(P281)
なお、読みやすくするために、改行し、空白行を入れました。
とくに問題のない文章に思われるかもしれません。
問題の箇所は、2つ目の文章にあります。
この2つ目の文章には、暗に「ブレイクスルーは」という主語があるわけです。
ただ、「クライアントに対する」以降の部分に関しては、「ブレイクスルーは」という主語が当てはまりません。
この後半部分に関しては、「ブレイクスルーによって」という、要因を表すフレーズと、抜けている主語を示してこそ読みやすいものとなるのです。
以下、2つ目の文章の改善文です。
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またブレイクスルーは、どんな分野でも劇的な改善をもたらすものであり、ブレイクスルーによって、クライアントに対するあなたの影響力、効率性、効果性、生産性が高まれば、あなたは、クライアントを活気づける価値ある存在になることができます。
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2つ目の文章には、主語がひとつも明示されていませんでしたが、改善例のように、しっかりと主語を明示することによって、うんとわかりやすい文章になったのではないかと思います。
なお「価値ある」というフレーズは、「存在」というフレーズに近づけて、「価値ある存在」としたほうが正しいかと思います。
以上、文章というものは長く複雑なものになるほど、しっかりと主語を示さないと、わかりにくい文章になってしまう、という話をさせていただきました。
参考になれば幸いです。