今回は、状況を間違ってイメージされてしまうケースについて見ていきたいと思います。

いつものように『ハイパワー・マーケティング』(角川書店)からの引用です。

問題の箇所は、「第9章:ダイレクトメールは1万人の営業部隊」のなかにあります。

ここでは、2つの事例をお見せします。

これについては、問題の引用文を見ていただいたほうが早いかと思いますので、さっそく解説に入っていきたいと思います。

状況を間違ってイメージされる文章

まず1つ目は、芝生のメンテナンスを行う業者が書いた文章、という体(てい)で、『ハイパワー・マーケティング』のなかで紹介されているものです。(P162)

芝生のメンテナンス業者が、どのようにお客様が依頼したらいいのかについて、順番に説明した文章になります。

以下が引用文です。

あなたは、この文章を読んで、どのような状況をイメージしたでしょうか?

問題の箇所は、2つ目の文章です。

「無料でお見積もりいたします」という文章を読んだとき、すぐにその電話口で見積もりをする、とも取れるわけです。

しかし実際には、自宅まで伺って、芝生の様子を見てからでないと見積もりはできません。

また、「もちろんお断りいただいても結構です」という部分に関しても、「電話口で業者が見積もりすることを断ってもよい」とも取れます。

ですから、以上のような誤解を防ぐために、本当は以下のように書くべきなのです。

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B.住所とご都合のよいお日にちをお伝えください。あなたのご自宅まで伺い、無料でお見積もりいたします。もちろんそのあと、お断りいただいても結構です
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このように書けば、状況を時系列で、正しくイメージできるのではないでしょうか?

なぜこのような誤解が生じるのかというと、読み手に「電話口でやりとりしている」という状況をイメージさせたあと、「状況が変わる」ことを伝えないうちから、つぎの内容に入ってしまっているからです。

読み手にしてみれば、今まで「電話口での会話」をイメージしていたわけですから、その後の文章も、「電話口でのやりとり」であるとイメージしてしまうわけですね。

もうひとつのケース

もう一つのケースは、「セールスレターは長いほうがいいのか、短いほうがいいのか」ということを説明しているくだりになります。

結論として、この本では、「セールスレターは長いほうがよい」と主張しています。

その理由としては、読み手に対して十分な量の情報を与え、納得してもらうためには、どうしても長い文章が必要だからです。

この本では、そのことを読者に納得してもらうために、以下のような文章が書かれています。(P163)

以下、引用文です。

なお、読みやすくするために空白行を入れました。

問題の箇所は1行目です。

「訪問販売をしているときに・・・と指示するでしょうか?」

このように書くと、まるで販売員と一緒に訪問販売に行き、その横に立って指示しているという、間違ったイメージを読者に与えかねません。

しかし実際は、「訪問販売に行くまえに指示する」はずです。

このように、表現の仕方を間違えてしまうと、書き手が意図していることとは全く別の「視覚的イメージ」を、読み手に与えてしまうのです。

以下、1行目の改善例です。
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仮にあなたが訪問販売の会社を経営しているとして、販売員に対して、「時間の節約のためにプレゼンは30秒以内で止めるように」と指示するでしょうか?
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このように書けば、「販売員に随行していく」といった間違ったイメージを、読者に与えずに済みます。

ぜひ、文章を書く際は、読み手に状況を正しくイメージしてもらえているかどうかを、つねに考えていくようにしてください。

以上、参考になれば幸いです。