今回は、「支離滅裂とした文章」を取り上げ、それを添削してみたいと思います。
支離滅裂とした文章は、誰にも読まれません。
たとえ根気よく、最後まで読んでくれる人がいたとしても、その人は、もう二度と、そこには戻ってこないでしょう。
今回も、『ハイパワー・マーケティング』のなかから、該当の文章をピックアップしてみたいと思います。
今回取り上げる文章は、それほどひどい文章というわけではありませんが、「支離滅裂としている」という部類に入ると思われるため、ここで取り上げました。
それでは、さっそく見ていきましょう。
人には「感情」とともに「理性」も備わっている
これから引用する『ハイパワーマーケティング』(角川書店)というのは、マーケティングの権威であるジェイ・エイブラハムの著書を日本語に訳したものです。
翻訳したためなのか、非常に支離滅裂とした文章になっていたりするのです。
今回は、そのなかでも、とくに支離滅裂とした箇所をご紹介し、コピーライターの視点から添削してみたいと思います。
問題の箇所は、セールスレターの書き方について説明しているくだりになります。
セールスレターにおいては、まずはその冒頭に「大きな文字のキャッチコピー」つまり「ヘッドライン」を掲げます。
そのヘッドラインによって、まずは訪問者の「注意」と「興味」を引きつけるわけですね。
もし訪問者が、そのヘッドラインを目にして「興味」をおぼえたとしたら、その訪問者の感情はたかぶった状態にあります。
ただ、人間には「感情」とともに「理性」も備わっています。
ですからセールスレターでは、感情を刺激するためのヘッドラインを書いたあとは、今度はボディーコピーで、読み手の理性を納得させていかなければならないのです。
そうしてこそ、感情と理性を備えた読み手が、「購入」という選択肢をとってくれるわけです。
以上のことを念頭においたうえで、これからご紹介する引用文を見ていただければと思います。
支離滅裂とした文章は読まれない
以下が、問題の箇所の引用文になります。
なお、読みやすくするために適宜、空白行を入れました。
(ヘッドラインのあとのボディーコピーの説明です)
まず、3行目の「というのも」という部分です。
ここは一見、問題がないように思われるかもしれませんが、「であるため」「からです」と、理由を意味する言葉が、ひとつの文章のなかで2回使われています。
後者の「からです」を「ためです」に置き換えてみると、その不自然さがわかるはずです。
以下は改善文です。
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というのも人は、たいていの場合、感情によって購入を決めるものですが、その決定を裏付ける論理的な理由としての事実を必要とし、求めているからです。
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そのあとの「事実と目に見える証拠」のくだりは、悪くはありませんが、以下のように書いた方がわかりやすい文章になります。
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事実と目に見える証拠が冒頭の主張を裏付けることで、読者は確信を持つことができるため、購入を決断することが正しいと思えるようになります。
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ただ、問題の「支離滅裂とした箇所」は、そのあとになります。
支離滅裂とした文章の改善例
以下が問題の箇所です。
厳密にいえば、この3つの文章のうち、最初の2つの文章が「支離滅裂とした文章」にあたります。
別の表現をすれば、「意味不明の文章」ということです。
「確信とは感情によって生み出される」とは、いったどういうことでしょうか?
読んでいる人は、意味がわからないはずです。
ただ、ここまでの内容から考えると、このくだりは、以下のように書くべきではないでしょうか?
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確信とは論理的な裏付けによって生み出されるのです。
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つぎの「心が頭に命令を下す」という表現も、まったく意味がわかりません。
なぜなら、「心」も「頭」も同じようなものだからです。
読み手にしてみれば、「この2つはどう違うの?」ということになってしまいます。
以下、改善文です。
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「人間の理性」が最終的に購入を決定するということを、忘れてはなりません。
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このようにすれば、意味が通るようになるのではないでしょうか?
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それでは、ここまでの改善例をふまえて、最初に示した文章全体を書き換えてみたいと思います。
いかがでしょうか?
ずいぶん意味が通りやすくなったのではないかと思います。
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以上、「支離滅裂とした文章」を取り上げ、それを添削してみました。
参考になれば幸いです。