今回は、文章を書く際は「因果関係を明確にする」という話をしたいと思います。

文章内で「因果関係」を示すということは、「根拠」「理由」を文章のなかに織り込むことになるため、文章の「説得力」が増す効果が期待できます。

ですから、文章のなかで「根拠」や「理由」を示さなかったり、たとえこれらを示していても因果関係がわかりづらかったりすると、「説得力を高めるチャンス」を逃してしまいます。

それでは今回も、『ハイパワー・マーケティング』(角川書店)のなかにある文章を題材に添削してみたいと思います。

それでは、さっそく見ていきましょう。

「便利さ」はひとつの価値

いきなり添削箇所の文章を示しても理解しづらいかと思いますので、まずは、その前後の状況から解説したいと思います。

『ハイパワー・マーケティング』の「追加購入」のパートには、著者のジェイ・エイブラハムが、チェーンのコンビニ店とガソリンスタンドにコンサルティングをしたときの様子が書かれています。(P143)

そのガソリンスタンドでは、支払いを屋内で行うようになっていて、その屋内にコンビニが併設されていました。

彼はクライアントに対して、まずは30日間だけ「ある実験」をしてほしいと提案しました。

それは、コンビニで扱っている商品の半数を20%ほど値上げする、ということ。

これに対して、クライアントは驚きを隠せませんでした。なぜなら商品の半分だけとはいえ、値段を20%も上げてしまったら、誰も買わなくなってしまう・・・と思ったからです。

しかし著者のジェイ・エイブラハムは主張します。「便利さには、それ自体に価値がある。だから、値段を上げたとしても多くの人は商品を買うはずだ」と。

問題の箇所は、このあとになります。

「因果関係」がかみ合っていないケース

以下は引用になります。

一見、なんの問題もないように思われるかもしれません。

しかし、ここで示されている「因果関係」は成り立っていないのです。

なぜなら、「同意」しただけでは、けっしてお金が増えることはないからです。

「同意」したあと、言われた通りに実行して、はじめて増収を手にできるのではないでしょうか?

以下は改善文です。
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彼らはしぶしぶ同意し、アドバイス通りに行なった結果、その試みを始めて12か月で90万ドルの増収を手にしました。
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『ハイパワー・マーケティング』の次のくだりでは、お客さんはガムやコーヒー、ドーナツなどに、喜んでお金を支払った、という話が続きます。

じつは、そのあとにつづく文章も「因果関係」が十分に示されていないのです。

以下は、問題の箇所の引用文です。(読みやすいように空白行を入れました)

2つ目の文章は、本来「理由」として示せるはずです。

そうすることによって、文章自体の説得力をアップできるのに、因果関係が不明瞭になっているため、せっかくのチャンスを逃してしまっているのです。

以下、改善例です。
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なぜなら人々は急いでおり、仕事やほかの場所へ行く途中だったり、会議に向かう途中だったりして、冷たい飲み物や温かい飲み物、サンドイッチなどをすぐにでも必要としているからです。
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補足すると、冒頭に「なぜなら」という言葉を置くことで、「この文章は理由を述べた文章です」ということを、まっさきに読み手に伝えることができます。

また、改善文には「すぐにでも」という言葉を補いました。

「急いでいる」のだから、「すぐにでも必要としている」わけですね。

そのほか、別の話の箇所でも、「因果関係」に関して気づいた点があったので、それも書いておきたいと思います。

因果関係をしっかりと伝えていないケース

前項でも、「因果関係」がしっかりと伝わっていないケースをご紹介しましたが、ここでも同じようなケースをご紹介したいと思います。

『ハイパワー・マーケティング』の「追加購入」のくだりには、高級志向の人たちに販売することで、売り上げが飛躍的に伸びる、という話が展開されています。

そしてその話は、以下のような文章で締めくくられています。

以下、引用文です。読みやすいように空白行を入れました。

上記のような書き方では、以下のように誤解される危険があります。

「ポジショニングを変えて高級志向層むけにすると、多くの人たちが、突然あなたの存在を知って、商品やサービスを購入するようになる」

しかし、たとえばサイトなどで、「高級志向層むけ」に内容を書き換えたからといって、その日からすぐに多くの人たちに知られるわけではありません。

そのあいだに「口コミが広がる」という過程が必要なわけです。

以下、改善文です。

このようにすれば、「口コミが広がったから、いろいろな人に知られるようになる」という「因果関係」が、読み手に明確に伝わるのではないでしょうか?

なお、細かいところでいえば、「高級志向層向け」としてしまうと「向」という2つの字が近くにあるため、読みづらくなってしまいます。

そこで、2つ目のほうをひらがなにしました。

また、「多くの場合既存のクライアントが」と書くと、漢字どうしが連続してしまうため、読みづらくなります。

そこで、漢字どうしのあいだに読点を打つことによって、文章を読みやすくしました。

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以上、この記事では、文章においては因果関係をしっかり示す必要がある、という話をしてきました。

参考になれば幸いです。