今回も『ハイパワー・マーケティング』の本のなかで、不適切な部分を添削してみたいと思います。
この本は、マーケティングの世界的な権威であるジェイ・エイブラハムが著した本を、日本語に翻訳したものです。
ですから、著者の文章というよりも、どちらかというと翻訳者の文章能力に問題があるのかもしれません。
今日は、商品の「追加購入」のくだりにある、けっこうな量の文章を取り上げます。
お客さんが何かを購入しようとしたとき、販売者は、その人がもっとも求めている未来を確実に実現してあげるために、その人にもっとも適した商品を勧めてあげる必要があります。
今回取り上げる文章は、そういった内容のくだりになりますが、「読点の使い方」にかなり問題があるのです。
そのほか、文章冒頭の「接続詞」に関しても、まだ工夫の余地が見られます。
ということで、「読点」と「接続詞」を中心に、そのほか気づいた点についても添削を試みてみたいと思います。
かなり長い文章の引用になります。
それでは、さっそく解説していきましょう。
問題の箇所の引用文
それでは『ハイパワー・マーケティング』の「追加購入(アドオン)」の章のなかから、気になる箇所(P138)を引用してみたいと思います。
内容が伝わりやすくなるように、とくに添削の必要がない部分も引用します。
(読みやすいように1行ずつ改行し、空白行を入れました)
この本は、かなり古いものであるため、家電製品の例として「ビデオデッキ」が登場していますね。
それでは、上記の文章のなかで不適切と思われる箇所を添削していきます。
適切に読点を打たないと、誤解のもとになる
まず、最初の2つの文章はとくに問題はありません。
問題は3つ目の文章です。(以下、引用です)
この文章は、私なら以下のように書きます。
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すなわちクライアントが、購入する家電に求めるものは一人ひとり違う、ということです。
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これは、「クライアントが購入する」と読まれるのを防ぐためです。
もちろん、「クライアントが購入する」のは間違いありませんが、ここでは「クライアントが求めるもの」と読ませたいわけです。
ですから、あえて「クライアントが購入する」と表現せずに、ここは「(クライアントが)購入する」といったように、「暗黙の了解」という体(てい)にするわけですね。
もしくは、「クライアントが」のあとに読点を打たないのであれば、以下のように書くこともできます。
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すなわち、クライアントが「購入する家電」に求めるものは一人ひとり違う、ということです。
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この場合は、「すなわち」のあとに読点を打ちます。そうしないと、息継ぎのタイミングがなくなるからです。
・・・
では、つぎの文章を見てみます。
ここは情報を補ったほうが、理解がしやすくなります。
以下は改善例です。
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多くの家電量販店では、まずはベーシックで、パフォーマンスの質の高いモデルを宣伝します。
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このようにしたほうが、文章がイメージしやすくなるのではないでしょうか?
文章の冒頭をわかりやすくする
さて、先ほど引用した文章のなかで、一部をふたたび引用します。
まず、
この部分ですが、文章の冒頭に「では」というフレーズを置いたほうが、前段から流れるようにつながっていくのではないでしょうか?
先ほども、この点についてはお伝えしましたね。
以下、改善例です。
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では、なぜそれぞれの機器の特長をもっと強調するような宣伝をしないのでしょうか。
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・・・
さて、つぎの文章を見てみます。
前述した「なぜ〇〇でしょうか」と疑問を投げかけている箇所のあとに、「その時点では」で始まる文章があります。
しかし、この文章は、「・・・からです」という部分を目にするまで、それが「理由を書いた文章」ということがわかりません。
つまり、この語尾の形を目にするまでは、この文章の主旨が、読み手には伝わらないのです。
それでは読み手に対して不親切ですし、読み手にストレスを与えることになってしまいます。
以下が改善例です。
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その理由は、この時点では、ある特定の電子機器に、クライアントがどんなパフォーマンスを求めているのか、判断のしようがないからです。
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このように、文章の冒頭に「その理由は」という言葉を置くことによって、「この文章は、理由を述べた文章ですよ」ということが読み手に伝わります。
ただ、「その理由は、その時点では」と書くと、「その」が連続してしまうため、読み手に「くどいイメージ」を与えてしまいます。
そこで、「この時点では」というフレーズに変えました。
読点をしっかりと打つ
それでは、最後の文章を見てみたいと思います。
とくに問題のなさそうな文章に見えますが、読点の使い方を誤っているために、ちょっと読みづらい文章になってしまっています。
問題の箇所は、「彼らの好みや先端技術に対する考え方」という部分です。
ここは読点が打たれていないため、ひとつづきのものと捉えられる可能性があるのです。
以下、改善例です。
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それは、彼らに質問し、彼らがどんな風に使うのかを観察しテストして、彼らの好みや、先端技術に対する考え方を知って初めて判断できることです。
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このように読点を打てば、少なくとも誤解される可能性はなくなるのではないでしょうか?
ただ、上記の箇所に読点を打つと、あまりに読点が多くなりすぎて、見栄えが悪くなります。
そこで、「・・・を知って、初めて判断できることです」という部分にある読点を取り除きました。
ただ、この部分は、とくに読点がなくても違和感がないのではないかと思います。
・・・
ちなみに、ひとつだけ細かいことをいえば、「どんな風に」ではなく「どんなふうに」と書くべきです。
そのほかの例でいえば、「色々な」ではなく、「いろいろな」という表現を使うべきです。
この引用文にも出てきましたが、「恐らく」ではなく「おそらく」ですね。
このように、「言葉の意味とは、とくに関係のない漢字」は、できるだけ「ひらがな」にしたほうがよいのです。
まとめ
以上、かなり長い引用文を取り上げ、添削してきました。
読点を適切に打ってこそ、その文章は読みやすいものになります。
また、文章の冒頭に「フレーズ」や「接続詞」を置いてあげるだけで、その文章全体は、論理的で読みやすいものとなるのです。
最後に、この記事の最初でご紹介した引用文の中に、ここまでで添削してきた文章を織り込んで、あらためて構成し直してみたいと思います。
参考になれば幸いです。