この記事では、「貼り紙や看板ひとつで、人に影響を与える方法」について解説していきたいと思います。

コピーライティングが活躍するのは、商品やサービスを売る場面だけではありません。

じつは、広告とは関係のない「貼り紙」や「看板」に、この「コピーライティング」を活用していくことができるのです。

この記事では、「短い言葉」で人に影響を与える方法を、具体例を挙げながらご紹介していきます。

その方法を知ることで、あなたは、人に強い影響を与えられるような「貼り紙」や「看板」が自在に作れるようになるはずです。

それではさっそく、コピーライティングを「貼り紙」や「看板」に応用していく方法について解説していきたいと思います。

「前提挿入」を使う

「貼り紙」や「看板」に文章を書いて、自動的に人に「こちらの望む行動」をとってもらいたい場合、「前提挿入」というテクニックが有効になります。

これは、その名が示すとおり、「相手が、こちらの望む行動をとってくれるという前提」でメッセージを書く、というものです。

たとえば、トイレをきれいに使ってもらいたい場合、トイレ内の目につきやすい場所に、以下のような文章を書いた「貼り紙」をするわけです。

「いつもトイレをきれいに使っていただき、ありがとうございます」

つまり、「トイレを使う人はみな、きれいに使ってくれている」という「前提」でメッセージを発信するわけですね。

もちろん、このような文章を書く側は、実際に「人が使用しているところ」をつねに監視しているわけではありませんし、ある意味、こちらの勝手な「決めつけ」ともいえます。

しかし、このような「前提」を文章内に挿入することで、読み手に「こちらの望む行動」をとってもらえる確率が上がるのです。

なぜ「前提挿入」が有効なのか?

先ほどような文章を目にした読み手は、以下のように考える傾向にあります。

  • 「ありがとう」と言われたからには、きれいに使わなくちゃ
  • ほかの人はみな、このトイレをきれいに使っているに違いない

一方的に「お礼」を言われると、人はその人に対して「好意」を感じる傾向にあります。

あなたも、コンビニやスーパーで店員さんに、愛想よく「いらっしゃいませ」と言われて、うれしい気持ちになり、そのままお店でたくさん買い物をした、といった経験はないでしょうか?

この「トイレの貼り紙」でも、それと同じような「心理」を利用しているわけです。

また人は、「多くの人が行なっていることは正しいことに違いない」と考える傾向にあります。

とくに日本人は、こういった「多数派につく」傾向が強いといわれていますが、この「トイレの貼り紙」は、そういった人間心理もうまく利用しているわけですね。

そのほか、もうひとつだけ付け加えるならば、「トイレをきれいに使って」という言葉を見た人は、しぜんと「きれいなトイレ」をイメージしてしまうものです。

そして実際に、脳内にイメージした「きれいなトイレ」にふさわしい「きれいな使い方」を、無意識のうちに実行するわけです。

ただし、このテクニックを使う場合には、ひとつだけ注意点があります。

それは、実際にそのトイレが「きれい」でなければならない、ということです。いつもピカピカにしている必要があるわけです。そうしないと、たとえ「貼り紙」をしていても、なんの説得力もないからです。

ダメな貼り紙の例

それでは、今度は「ダメな張り紙」の例を挙げてみましょう。

たとえば、先ほどと同じシチュエーションで、トイレをきれいに使ってもらうために、以下のような文章を書いた「貼り紙」をするとします。

「トイレを汚さないでください」

このような言葉を目にした人たちは、以下のように考える傾向にあります。

  • まだ使ってもいないうちから、決めつけるなんて感じ悪いな
  • みんなトイレを汚く使っているのかな?
  • だったら、自分も汚く使ってもいいよね

このように感じた人の多くは、そのトイレを「きれいに使おう」などとは考えなくなります。

さらに、この貼り紙を見た人は、「トイレを汚さないで」という言葉から「汚れたトイレ」をイメージしてしまいます。

その結果、無意識のうちに「汚れたトイレ」にふさわしい使い方をしてしまうことになるのです。

以上のように、「言葉選び」を間違えてしまうと、こちらがとってほしい行動とは真逆の行動へと、相手を駆り立ててしまうわけですね。

読み手の「イメージ」をかき立てる

先ほどご紹介した「前提挿入」という手法のほかにも、「貼り紙」や「看板」だけで、自動的に人に影響を与える有効な方法があります。

それは、人の想像力をかき立てる、という方法です。

もちろん、先ほどの「トイレの貼り紙」も、人の想像力をかき立てているわけですが、今ここでいうところの「イメージ」とは、「悪いイメージ」をさします。

たとえば、どこかの敷地の入り口に、以下のような文章が書かれた看板があったとしたら、あなたはどのように感じるでしょうか?

「防犯のため、監視カメラを設置しています」

このようなことが書かれた看板が目に入ったら、たいていの人は、その敷地に足をふみいれるのは気が引けるわけです。

上記のような文章を目にした人は、勝手に頭のなかで「監視カメラが設置されている状況」を想像してしまうからですね。

たとえ、その周辺に「監視カメラ」が見当たらなくても、人は、「どこか見えないような場所に、監視カメラが設置されているに違いない」とイメージします。

そして、実際にその敷地内に「侵入」しようとしていた人は、「警察につかまる状況」までイメージするかもしれません。その結果、「警察につかまるのは嫌だから、ここに侵入するのはやめておこう」となるわけです。

実際、このような「人の心理」をよく知っている人は、「監視カメラ」を設置しないで、看板だけを掲げているケースもあります。

「監視カメラ」を設置するとなると、かなりの出費になるからですね。

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以上、この記事では、コピーライティングは「貼り紙」や「看板」にも応用していける、という話をしてきました。

そして具体例を挙げながら、「前提挿入」や「イメージ」を活用した方法をご紹介しました。

人の「心理」を洞察したうえで「適切な文章」を書き、それを人目につく場所に掲げておく。

そうすれば、たとえそれが1枚の「貼り紙」、ひとつの「看板」であっても、自動的に人に大きな影響を与え続けることができるのです。

ぜひ、貼り紙や看板を見かけた際は、それがどのような影響を人に与えているのかを考える習慣をつけてみてください。